おでかけしよう♪
2006年 10月 13日
母がそう言い出したのは、昨日―。
お昼ご飯のあとでした。
「船?」
私は首をかしげつつ、尋ねてみると…。
「確か、明日、大きな旅客船が油津港(日南市の唯一の港)にやってくるのよ。だから、前々からこぱぐパパと”一緒に行こう”って予定を立てていたんだけど、ちょうどいいし、じいちゃんも一緒に行かないかなと思って」
「ふぅ~~~ん、そうなんだ~」
「だからさ、父ちゃん。見に行こうよ」
にこにこと誘う母に、祖父は戸惑いがちに、こう言いました。
「でも…、そしたら、この家に誰もいなくなるだろう?」
「いいじゃない。一緒に行こうよ」
「でもなあ…」
うつむく祖父と、懸命に誘う母を交互に見ていた私は、ついに口を出しました。
「一緒に行こうよ、じいちゃん。家はばあちゃんがいるから、大丈夫だって」
「そうかなあ~」
ちょっと目を上げた祖父。
その目にちらりと迷いが走ったのを、私は見逃しませんでした。
”最終兵器”投入です!
「私、じいちゃんと一緒に船を見たいなあ♪」
すると。
祖父は顔を上げ、にっこり微笑みました。
「そうかぁ~~? 仕方ないなあ。じゃあ、行くかあ♪」
孫が大好きなおじいちゃん。
どうやら、作戦成功のようです☆
その証拠に、母が帰ったあとに、ことあるごとに、
「おっきい船じゃろうな~。そんな船が油津に入ってこれるんじゃろうか~」
とか、
「軍の船(自衛隊の船)は、しょっちゅう来おったけど、こんな船を見に行くのは初めてじゃな~」
とか、
「こぱぐさんの母さんは、どういう道筋を通って、船を見に行くんじゃろうな~」
とか…。
もう、大変でした(笑)。
しかも、朝、目覚めたあとも、
「今日は何時から行くんじゃろうか~」
と、ウキウキ☆
午前9時過ぎ、ようやく母から電話があったときは、テレビを消して、おもいっきり耳をすませていました。
そして、電話を切るなり、
「何時に行くって?」
「1時にお昼ご飯を持って来るから、それを食べて、2時には出ようって」
「船はもう、着いているんか?」
「うん。朝に着いて、夕方過ぎには行ってしまうんだって」
「なんだ。もっといればいいのになあ…」
「旅客船だからねえ~」
そんなやりとりをすませたあと。
祖父はいつものように、昼寝に入るかと思いきや…ご老人らしく、ゆっくりと庭に出て、蛇口にホースをはめこんで、なんと庭の水やりを始めました。
その顔はニコニコ♪
なんだか、まるで子供みたいです♪
「じいちゃん、本当に嬉しいんだね…」
しかし、その喜びは私の予想を超えていたようで。。。
庭をあちこち歩き回ったあと、今度は身支度を始めました。
時は、午前9時半過ぎ―。
出発まで、まだ何時間もあるというのに。。。
机に座って、整髪剤で髪を整え、はみ出た髪を少し切っています。
そのうち、こちらを振り返って、
「こぱぐさん、爪きり知らんか?」
「えっ、知らない。じいちゃん、どこにやったの」
「え~~っとねぇ……あぁ、あったあった~」
「もぉ~~…」
しっかり爪も切ったあとは、玄関を除く、家中の戸締りを始めました。
「…って、まだ、10時前なのに!!」
そのうち、タンスの取っ手をさわって、
「ここには大切なものが入ってるんだ。最近、空き巣が多いからなあ」
と、南京錠をかけてしまいました。
満足げな祖父。
そのそばには、タンスの中身の、おそらく何倍もする私のノートパソコンが無造作に置いてありました。
『ごめんよ…おじいちゃん…』
それから、お客さん用の机を移動させたり、畳の上のゴミを拾って回ったり。。。
「じいちゃん、いいってば。そんなの、私がやるよぉ!」
着いてまわる私に、
「もう、身震いしてたまらんのよ~」
と、振り切って、あちこち歩き回り…そして、
「あぁ、なんだか疲れてしもたわ…」
沈没…。←船を見に行くのに…
座布団を丸めて、畳の上に横になってしまいました。
でも、やっぱり興奮しているらしく、
「おっきいんやろね~。どれくらいの高さじゃろうか」
とか、
「早く行かないと、行ってしまうんじゃないやろか…」
とか、
「油津まで、そんな船を見に行くのは、初めてじゃね~。すごいんだろうね~」
まあ、本当に大変でした。
そのうち、お昼になり…。
「こぱぐさん、早く昼ごはんを食べるぞ」
と、しっかり完食したあとは、服探し。
「じいちゃん、船を見に行くだけなんだし、スーツはいらないってば!」
「そうかぁ~?」
久々の外出&楽しみにしていたイベントに、祖父のテンションは、かなりハイになったままのようでした。
・・・で、母到着☆
さっそく向かった港には、大きな船が止まっていました。
「わ~~~、大きいねぇ♪」
「すごいねえ~」
驚く母と私。
で・・・祖父はというと☆
「おぉ、でっかいねえ~」
子供みたいにはしゃいでおりました☆
こんな祖父、初めて見ました♪
いや~~、よかった、よかった☆
そのあとは、隣町の山に、ちょっと大きな杉があるというので、そこまでドライブ♪
そして、祖母のお墓参り☆
帰り着いた頃には、祖父は、
「疲れた疲れた」
と、ものすごい笑顔で言っていました。
つられて、母も私も笑顔♪
なんだか、とっても楽しくて幸せな1日になったのでした☆
ちゃんちゃん♪