迷子物語~下~
2005年 07月 06日
2パグそろって、仲良しになってくれると信じていた父は、困惑しました。
「なんで、仲良くしてくれないんだろうねえ~~?」
そうこうしている間に、タロウは縁側を離れて、庭の裏に行ってしまい、縁側の”よそパグ”との距離をどんどんとっていき・・・そして。
「ふがふが・・・(--メ)」
たまに戻ってきて、目が合うと・・。
「(;´д⊂)」
また、裏の方へと行ってしまいます。
こりゃ~、もうダメだ。。。
タロウくん、すっかり”負け犬”です。
「お父さん、どうするの?」
経緯を聞いた母が、ケージのそばまでやってきて、縁側にたたずむ父に尋ねます。
「だって・・・今更、返すのもかわいそうだろう・・・? 保健所に連れて行かれるかもしれないんだし・・・」
保健所―。
目の前のよそパグは、父に身を摺り寄せ、甘えています。
その必死そうなことといったら・・・。
迷いパグになって、どれぐらい経つかはわかりませんが・・・。
これまで、きっと、せつない日々を送ってきたのでしょう。
父に寄ろうとするタロウを見ては、
「ぎゃうぎゃうヽ(`д´)ノ」
威嚇して、タロウを追っ払っています。
・・・というか、逃げるなってば、タロウ(-_-;)
保健所に連れて行って・・・もし、飼い主が来てくれなかったら―。
そう考えた父は、とりあえず、うちで預かってから、あちこち当たってみようと思ったのでした。
しかし、タロウ命の我が母。
迷いわんこの境遇に理解は示しても、このタロウの状態―。
困惑を隠せないようでした。。。
「でも、タロウと仲良くできないんなら・・・どうしたらいいんだろうねえ~~(;´д⊂)」
父、母、私―。
すり寄りと威嚇を繰り返す彼らを前に、話し合った結果―。
タロウは、今までどおり居間のケージ&庭で過ごし、よそパグちゃんは玄関にスペースを設けて、そこから前庭に出たりして、ちょこちょこ遊んでもらうことにしました。
「ふ~~~ε=(~Д~;)」
ようやくケージを取り戻して、ほっとするタロウ。
けれど、ぬいぐるみを可愛がっただけで、
「ぎゃうぎゃうぎゃう(T-T)ノシノシ」
さんざん訴えるタロウです。
時折、よそパグの声を聞きつけては、
「わんわんわんわんヽ(`д´)ノ」
威嚇したりしてました。
負けてたくせに・・・。
これぞ、負け犬の遠吠え(´Д`;)
それからというもの―。
私がよそパグちゃんと散歩に出た直後に、母がタロウと散歩に出たり。。。
私たち家族が、居間につながるリビングで食事中に、隔離されたよそパグちゃんが鳴いて訴えたり。。
ちょこちょこと思い出が増えていくたび、私たち家族は、
『なんとかして、よそパグちゃんとタロウを仲良くさせることはできないか?』
と、考えるようになりました。
タロウには、あまり犬友がいません。
そんな彼が、仲良くなれるパグちゃんと一緒に暮らせるとしたら、どんなに楽しいでしょう。
・・・と、数日経ったある日。
勤務先から、父が電話をかけてきました。
「なに~~?」
仕事中は、滅多に電話してこない父。
不思議に思って、母が尋ねると。。。
「こぱぐ、よそパグちゃんの飼い主さんらしき人が現れたって!!」
「え!?」
その時、タロウは昼寝中。
学校が休みだった私は、玄関でよそパグちゃんと戯れておりました。
・・・というのも、このパグちゃん、迷子になったせいか、もともとの飼育環境がそうだったのか、とても甘えん坊で、一人にされるのを特に嫌っていたのです。
「・・・あ、そうなんですか・・・。・・ええ・・・確かにスリムですね・・・」、
「はい・・・。確かに娘が、ちょっと後ろ足を軽くひきずったって言ってました・・・」
少しずつ、符合していく特徴―。
よそパグちゃんをひざに乗せたまま、私がじれったく聞いていると。。。
「あ、それが名前なんですね? ためしに呼んでみます」
そして。
受話器をふさぎ、母は玄関に向かって声をかけました。
迷子になってから、久しく、呼ばれていなかったその名前を―!
「パグさん!!!」
すると。。。
「((((゜д゜;))))!?」
驚くほどにビクンと反応して、私のひざから降りて―。
パグちゃんは、あちこちを探し始めました。
それを見て、母は確信。
「反応してます。今から連れて行きましょうか?」
それからすぐ―。
母と私は車に乗り、待ち合わせの場所へと急ぎました。
助手席に座る私の膝の上では、よそパグちゃんが、
「・・・(T-T)???」
横になることもせず、とても不安そうに、座っています。
そして、待ち合わせの場所で。。。
少し遅れて、飼い主さんご夫妻到着。
事前に車種を伝えてあった私たちの車を見つけて、駆け寄ってきました。
母は、私側のウィンドウを開けて、
「たぶん、間違いないと思います。さ、こぱぐ、出て」
そして、私が出た瞬間、でした。
「(=´∇`=)ノシノシノシ」
よそパグちゃんが、私の胸の中で暴れ始めました。
「やっぱり!」
と、ご主人に渡してみると。。。
「(´Д`;)、(=´∇`=)ノシノシノシ、ヽ(;´д`)ノ」
めまぐるしく表情を変えながら、しっかとご主人にくっつき、離れません。
背中を撫でてみると、びっくりするくらい、ブルブル震えていました。
「この仔、パグさんかなあ~~??」
劇的な再会に戸惑うご主人の背に立つ奥さんは、少し涙ぐみながらこう言い切られました。
「間違いないわよ! うちのパグさんよ! パグさんよ!! あぁ~~、よく戻ってきたね~!」
そして、ご主人は背中を、奥さんは頭を撫でながら―。
経緯を話してくださいました。
1週間と少し前―。
開け放してあったドアから出た、パグさん。
おうちは住宅地だったので、車の出入りもなかなか激しく。。。
気付けば、パグさんはいなくなっていました。
当時、高校生だった娘さんは、帰ってきて、大事なパグさんがいなくなっているのを知って、大ショック!
3日ほど学校を休んで、ポスターを作ったり、近所を歩いたり。。。
思いつく限りのことをされたようです。
でも室内飼いだからと、首輪も鑑札もしていなかったためか、手がかりはゼロ。
そのうち、諦めることにしたようです。
『きっと、いい人に飼われているよ・・・』
そこへ、見知らぬ人~うちの父~からの電話☆
もう、藁にもすがる思いで、教えてもらった我が家に電話をかけてきたとのことでした。
「あ~~、もぉ、パグさん。日南市にまで行ってたのね!」
パグさんの、そのしだいに落ち着きを取り戻した頭をなでながら、奥さんは言いました。
「・・でも、このリードとハーネスは、知らないですね。パグさんは何も着けずに家を出たはずだから・・・」
そして、父から聞いた話も総合して・・、おぼろげながら、パグさんの行動がわかりました。
うちに帰れなくなったパグさんは、まだ若いこともあって、どうやら、ほかの誰かに飼われていたようです。
そして、新しいハーネスとリードをつけてもらって、どこかにつながれていたようなのです。
それにすっごく抵抗したか、もしくは散歩のときに逃亡したか―。
そこまではわかりませんが、逃げたパグさんは、深夜の宮崎市をとぼとぼと歩いていました。
住宅街であるそこは、もうすっかり、電気もまばらで。。。
それを、たまたま見かけた人がかわいそうに思って、父の職場に連れてきたと。。。
だいたい、そんな感じでしょうか。
連れてきた人が、父に語った話によると(その人は、家の事情で保護できないと言っていたらしいです)
「本当に寂しそうに歩いているから、放っておくことはできなかった」
とのこと―。
かわいそうなパグさん。
大冒険したんだね。。。
でもでも、そんな彼も、奥さんに抱きかかえられて、とても嬉しそうに車に乗り込み、もと来た道を帰っていきました。
よかったね、パグさん。。。
もう、9年も前の話だけれど、今でも思い出すと嬉しくなる―そんな話でした☆